舞台裏のダイコンたち after
東京で演劇活動を行っている大沢ギンペイのブログです。趣味とか演劇とかいろいろと。
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異世界への誘い方
 調子に乗って、今回もストーリー構築の話。
 固めの話が続きます。

 劇団Radishのこれまでの作品は、なんらかの形で「異世界」が関わるものが殆どです。この場合の異世界とは、別に「剣と魔法のファンタジー世界」ではなくて、「現実には存在しない(とされる)要素が存在する世界」のことです。私が参加した、本公演作品についてみてみましょう。

・2004年度『カレッジ・オブ・ザ・ウインド』(成井豊)
 幽霊が登場。
・2005年度『フェアウェルソング・ラブソング』(米田遼)
 幽霊と、「霊界の住人」が登場。
・2006年度『AMMP[aemp]』(大沢ギンペイ)
 人間と同レベルの動きを持つアンドロイドと、プログラム『AMMP』が登場。
・2007年度『ひときれのフーガ』(原作・郡谷康士)
 「同じ一日がループする世界」と、その住人が登場。

 ね?
 並びとしては、ファンタジー・ファンタジー・SF・ファンタジー。全て現代物。(AMMPは2014年が舞台ですが、基本的に現代モノとして書いています。)
 AMMP執筆の際には『脱・幽霊モノ!!』が、作者のテーマの一つでした。

 劇団Radishのこれまでの方針に「分かりやすい演劇作品づくり」というのがあります。あまり難解でない、ストレートに笑い、泣ける作品作りということですね。

それには、観客に「現在の状況」を分かってもらわなくてはなりません。


 情報を伝達するには、言語的(バーバル)部分と、非言語的(ノン・バーバル)部分があります。前者は、音声でも文字でも、とにかく「言葉」を使う情報伝達のことで、後者はそれ以外です。表情・動きは後者。舞台装置のデザインなどもノン・バーバルに含めることが出来るでしょう。

 バーバルによって状況説明を行う場合には、二通りあります。
「劇中で行う」か、「劇外で行う」かです。
 劇外の場合とは、当日パンフレット等の、完全に「作品そのもの」とは外れた部分と、登場人物の「観客への語りかけ」を想定しています。

 まあ、基本的に作品内の状況なら、「劇中」での説明が大多数でしょう。
 そしてこれも、二通りに分けることが出来ます。

 劇中でのバーバルな状況説明は、具体的な説明対象が「いる」か、「いない」に分けられます。



 最近はかなり手軽にプロジェクタを使えるようですし、それ用のスライドをパソコンで作ることも簡単なのでしょうが、実際に私が関わったことはありません。プロジェクタなら、いくらでも文字情報を伝えられますね。
 しかしそういった例外を除くと基本的に、演劇というスタイルでのバーバルな状況説明は、役者の台詞に限られます。

 その「台詞による状況説明」のとき、対象が「いる」か「いない」かが、重要な問題となってくるのです。

対象がいる場合:「説明する」
 いきなり異世界をみせられた観客は、状況を理解していません。
 手っ取り早く状況を理解してもらうには、説明してあげればいいのです。
 ただし、登場人物が観客に呼びかけて説明するのは、あまりスマートではありません。
 だから観客と同じように、現状を理解していない人間を登場させてやればいいのです。



『フェアウェル』の主人公・祐二くんは、普通の人間でした。いきなり幽霊だの霊界の役人だのが目の前に現れたので、彼女らに説明を求めます。
『フーガ』の主人公・シンジは、普通の人間でしたが「ループ世界」に巻き込まれてしまいました。「ループ世界の住人」たちは、ご丁寧に状況説明をしてくれます。
『AMMP』の世界では「記憶増幅装置AMMP」という複雑な概念を説明するために、AMMPプレゼンテーションというシーンを設けました。これは観客に直接説明を行う手法に限りなく近いのですが、AMMPについて知る必要のある、「企業の上司達」を登場人物以外に設定することで、一応「劇中説明」の枠組みを持たせてあります。

対象がいない場合:「ねじこむ」
 登場人物にとっての「常識」を口に出させることで、観客に知識を与えます。
 観客にとっては「分からない」ことが前提となっている情報を小出しにしていくことで、大きな世界を構築することが可能です。
 観客の類推能力に期待するわけですから、理解してもらいたい内容が、必ずしも伝わらない危険は大きいです。

 主に、ライトノベル作家上遠野浩平氏の作品から学んだ手法です。

『AMMP』から、例を出してみましょう。

「アンドロイドが当たり前のように普及している世界」の描写には、こちらの説明方式を使いました。
 織原・ヒカワといった主人公サイドが「アンドロイド研究所という、非常に特殊な情景」であったのに対し、アマノという「アンドロイドが働いている居酒屋、アンドロイドが作り出す、この世界ではよくある親子関係」を描写することで、アンドロイドがいかにあの世界になじんでいるのかを表現したのです。
 ロボット一台の価格設定を匂わせたのも、これに入りますかね。

 また、人間関係の描写にも、極力こちらをつかいました。
 まあ、人間関係というのは「異世界」的な要素を含まない作品でも、観客に理解させなくてはいけない大事な事柄で、大抵の作品では「ノン・バーバルな部分によって」描写されてるんですけどね。
(「親子」という情報は言葉で伝わっても、「関係が良好な親子」であるのか「険悪な親子」であるのかは、結局「○○さんちは仲がいいよね~」などという台詞に頼らずに描写されなければならない。)


 今日のところは、このくらいにしておきましょうか。
 AMMPについて多く扱ったのは、私が執筆した作品で、構造を自身が理解しているからというのもありますが、唯一ネット上で脚本が公開されている作品で、非関係者の読者の方々に内容を確認して頂きやすいからという理由もあります。
 興味があったら、「はりこのトラの穴」さんからダウンロードをよろしく。
(ギンペイ)
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